第一章

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第一章

 ぶ~ん。ぶ~ん。ぱちり。たしかに手ごたえがあった。  蚊をたたくとき、両手を地面に対して垂直にするのではなく、水平にして、蚊を上下にはさむようにするといいらしい。蚊は危険を感じると、上のほうに逃げる習性があるので、そうすることによって、蚊の逃げ道をふさぐことができるからだ。私はそれを知っていたので、見事にしとめることができた。  閉じていた両手を開いてみた。片方の手に、あわれなるかな、蚊の亡骸があった。たっぷりと血を吸っていた。もう一方の手でティッシュをとり、蚊の亡骸を包んで、くずかごへ捨てた。一寸の虫にも五分の魂という。私はくずかごのほうに向かって、手をあわせた。  時計を見た。時刻はもう遅い。明日は大事な試験があるが、勉強は十分にやった。それよりも、夜更かしはお肌に悪い。私は電気を消し、ベッドにもぐりこんだ。
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