『Up to one hundred souls of triplets』

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「そうなの、そうなの。各回オムニバスの一話完結で、その都度に主演が今フレッシュな若手アイドルを起用してるのよ。一応、番組コンセプトとしてはアイドルのドラマの王道の恋愛モノではなく、内容はホラーとかミステリーとかサスペンス系を中心にやるらしんだけど、逆にその辺がうまいのよねえ。ラブストーリーとかだったら、共演の若い女アイドルやら女優にヤキモチやいちゃうから。そこの所を加味したディレクターだかプロデューサーだかは分からないけど、スタッフには評価してあげるわね。それにね……」  中年婦人のテナーボイスの甘ったるい梅沢の口調に久米は辟易しながらも、そういえば最近、駅前に新しいレンタルDVD屋ができたな、と梅沢の講談に対して気持ちのない相槌をしながら思い、仕事の帰りに新規入会して何かホラー系の映画でも借りるか、と心に定めていた。  夜も十時過ぎ。 久米は仕事を終えて、予定通り新しくできた、駅前のレンタルDVD兼CD店に向かった。以前は百円ショップだった店舗。什器の配置的にどうにも百円ショップの店内の面影が見られる。久米は、ほぼ居抜き式で店内の整備をしたな、と要らぬ思いを抱く。 久米は店内を歩いて簡単に品揃えを確認すると、カウンターに向かい入会の手続きをしようとした。とりあえず、入会申込書に必要事項を記入して、身分証代わりに免許証を店員に呈示する久米。 すると店員が、 「あの、申込書に書かれている漢字の名前と、免許証の漢字の名前が違っているんですけど?」 「え?」  注意して久米が申込書の名前の箇所を見てみると、久谷由悠希、と書いてあった。 「あ、すいません。ボケてました」     
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