『Up to one hundred souls of triplets』

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 久米は適当にそれらをセレクトして、会員になった初日にマニアックなホラー映画ばかり借りるのも店員にどう思われるものか、という一抹の危惧をしつつも、しっかりとレンタルして、帰りがてらにコンビニでカレーパンを買ってアパートにたどり着いた。  隣室の長瀬の部屋の窓からは明かりが見えない。まだ帰ってきてないか……忘れないうちに今日の飯代を払わせねえとな、と久米は一考して自宅に入る。 仕事の休憩中にカップラーメンで夕食をしたとはいえ、量が少ない上に食事摂取から時間も経っているので、カレーパンで小腹の減りをしのぎながら、DVD鑑賞。基本的に久米のホラー映画DVD鑑賞は、真剣に見るものではなくて、寝付けの準備がてらの行為。つまり、久米にとってのホラー映画は怖がるものではなくて、懐かしいワードで言えば一種のカウチポテト的な行為の一環で、それこそイージーリスニングかつヒーリング映像を視聴しているかの扱い。久米からすればホラー映画の残酷描写や恐怖シーンは、何やら学芸会のほのぼのとした手作り感満載の画(え)に見えて、心が落ち着くのである。というよりも、ホラー映画自体を下らなすぎる滑稽な映画(しゃしん)として久米は捉えていて、それを気だるい感覚で見ている事が、久米にとって癒し効果となっている。久米のホラー映画鑑賞はだいぶ偏った見方で自身に効用を与えていた。と言っても、久米自身にそれが おかしいという自覚は無かったが。     
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