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特にワクワク感なる思い入れもなくDVDをセット。カレーパン、瓶の牛乳を片手に久米は目前で繰り広げられる、人体崩壊描写や大仰な血糊の映像を鑑賞。口は半開き、時折、カレーパンを食べながら、相変わらずビデオ・バブル期時代のホラー映画はくだらねえなあ、と久米は思案し、重たそうな瞼を何とか釣り上げ、カレーパンを食べ終わるまでは寝るまい、とさらに決心しつつ、安寧の睡魔を喚起する癒しのスプラッター・ビジョンを堪能していた。
カレーパンを完食、瓶牛乳も完飲。もはや見ているホラーDVDもほとんど内容を理解しないまま、イージーに視聴しているので、刮目して見終える理由はない。しっかりと久米の狙い通りレンタルしたホラーDVDは睡眠導入剤の代わりになり、もたれている中古ショップで買った座椅子がテンピュールの高級ベッドの感覚に変わっていく。久米はやがて大きなアクビを放ち、借りたDVDをちょうど全部見終わる頃、テレビや電灯は付けっぱなしの状態で、案の定、そのまま眠りについた。
うたた寝からの睡眠は浅い。所謂、レム睡眠状態で浅い眠り。レム睡眠の期間は脳内で夢が見やすい状況。だからこそ久米は当初、奇妙な騒音の珍事は夢の出来事だと、半起き状態の頃は思っていた。
ガチャガチャ、ガチャガチャ、ガチャガチャ。
それは戸口ドアのノブを強引に開けようとしている音。その物音が夢うつつから、現実に起こっている事だ、と久米は理解すると目を覚まして半身を起こし、玄関の方の鍵のかかったドアを見つめた。
「おいおい、何事だよ?」
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