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焦りながら久米は呟くも、部屋の電気は付けっぱなしであからさまに人様がいるっていうのに強盗に入ってくるもんか? と幾分冷静に今の状況を把握していた。
久米は立ち上がって手持ちの武器として、どうしてかフライパンと包丁をセレクトした。
この強引なブッコミ方は、空き巣の類いとは違って精神異常者かも知れんな。警察に電話した方が良いか? しかし……な。
一瞬、久米はテーブルに置いておいたスマホに目を配らせたが躊躇し、しばらくドアの方を見つめその動向を窺った。すると突然、ドアのノブを強引に開ける動きはなくなり、無論、それに纏いつく雑音も止まった。
「お? あれ? 終わった、つーか、いなくなったか?」
ドア越しなので人の気配を感じ取る事は出来ない。久米はフライパンと包丁を置いて、恐る恐るドアへ近づいていった。唾をゴクリと一つ飲むと、威勢良く一気にドアを開けた。開いたドアの先には誰もいなかった。周りをキョロキョロと見回したが、人影は見当たらない。
「どっか行っちまったか?」
一人言交じりに、今一度周囲を見渡す久米。変わった所といえば、長瀬の部屋に明かりが灯っている事ぐらいだった。
長瀬の奴が帰っていたか。さすがにおふざけ野郎の長瀬でも、こんな幼稚なドッキリはしねえよな。
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