『Up to one hundred souls of triplets』

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店内もランチタイムのピークを過ぎ、所謂、店員が暇な空き時間のアイドルタイム。二十代半ば頃のイイ若者が働きもせず二人、無駄話を飲み放題のドリンク・バーをつまみに駆使しつつ、さらに暇潰しに腐心していた。四人掛け席のテーブルを挟み、向かい合うその二人、久米と長瀬は同じアパートに住み、年齢も近く、かつ隣部屋という関係の付き合い。そして、二人とも夕方から定職ではなくバイトを始めていて、どうにも生活パターンが似ている事もあり、いつの間にか交流を持つようになった。その流れで顔を合わせては、仕事が開始する時間まで、時折、近くのファミレスやフランチャイズのカフェなどで、女子高生グループの嬌声トークよろしく、途絶える事のない無生産な会話を繰り広げるようになった。 特に長瀬がお喋りで、 「何年か前にここらでバラバラ殺人事件があったのって知りません? 確か当時、犯人は高校生で通学の都合上両親とは離れて、ウチのアパート、つまり、久米さんの部屋で一人暮らし。それで詳しい内容は忘れたんすけど同級生だか、アルバイト仲間だかをバラバラにして殺害。あ、殺害現場はアパート室内じゃなく、どっかの廃屋工場だったらしいんですけどね。で、すぐに事件はバレたんすけど、あの時はかなり話題になってましたよ。犯人の通っている学校が一流の進学校だってのもあったし、それだから受験ノイローゼが原因だったのかとか、それともイジメ絡みの人間関係が問題にあったのかとか、後はもはや流行りとなった『誰でもイイから人を殺してみたかった』的な、無差別かつ無軌道な殺人じゃなかったのかとか……だけどその高校生の犯人は犯行を認めたものの、動機とか殺意についてはほとんど語る事はなかったって。だから何か曖昧なまま事件は風化していった 感じもありますけど」  と一連の『バラバラ殺人』の事件の経緯を、芸能リポーターのように、久米に滑舌良く弄してくれた。     
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