10人が本棚に入れています
本棚に追加
ジュルジュルとカフェオレをわざと音を立たせて飲む、久米。だが、昨夜の自身への奇事や地域の不安を念じ、浮き足立ったような久米の精神状態とは別に、肉体はどうしてかラップのリズムのように手足肩に小刻みな動きを弄して、表情も緩やかに見えた。
午後五時の退社。空模様もビードロ釉(ゆう)の色を呈して、僅かに宵の明星が眺められ外は街灯がついている。
夕飯にはには早いし、帰っても特にやる事はない。そういえば昨日借りたホラーDVDも、半睡状態とはいえ全部見終わって、しっかりと今日返却するためバッグに入れといたんだ。DVDを返すついでにレンタル屋に寄って、またどうしようもないSFかホラーのDVDでも借りてみるか。
久米の足は自然と駅前のレンタル屋へと向かった。無駄に煌々しい店内から射す明かりが抜けたガラスの自動ドアを抜け、久米はゆったりとした足取りで歩を進める。どうせ暇なので新しくできたばかりの、新店のレンタル屋を昨日初めて見に来た以上に散策してみようと久米は思った。
昨日はあまり気にしなかったけど、結構、広いなこの店。んで、二階がアダルト・コーナーか。
二階構造の店舗。定石通り一階はCDと一般DVDのレンタルが主体。二階は大人の世界のゾーン。久しぶりにアダルトDVDに食指をそそられたが、結局、久米は寝付けに効くDVDの方を選んだ。とりあえず久米はホラー映画同様に誘眠の作用がある、SF映画のコーナーへと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!