『Up to one hundred souls of triplets』

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「お、バカルー・バンザイの8次元ギャラクシーがある。それにソ連の頃のカルトなロシア映画の不思議惑星ギン・ザ・ザまで。この店はホラーだけじゃなく、SFまでもマニアックに充実しているな。今どき珍しい映画フリークの痒い所まで行き届いているレンタル屋だ。商業主義に走ってない。十分に良心的で合格点だ。あ、つーか、シルバー・グローブ/銀の惑星もDVD化してくれればなあ。あと悪魔の改造人間とかも……」  マニア特有の思わず声に出してしまう説明口調の独言。だが、久米自身はあくまで自分はただの映画好きのスタンスでいる。マニアック、つまり、オタク色を自らが染まる事に嫌悪を感じている。自分はあくまでノーマルに映画に限らず、あらゆる物事をフラットな視点で見ているんだ、と。ファナティックな心性などなく中道、あらゆる諍い事から離れ世間に普通に溶け込んでいる常識人だ、とも。  だからこそ真夜中に強引に人様の部屋に入り込もうとする輩なんて、俺のようなマトモな人間からすれば社会不適合者かつ変態性格破綻者なんだよな。  と多少の憤りを抱えつつも、一般的に見れば好事家が選びそうなDVDを借りて、帰路へ着いた。 アパートに着く頃はちょうど夕飯のタイミングの時間で、冷凍チャーハンを取り出して電子レンジで温め、それとカップ味噌汁を添えて夕餉とした。そして、DVDをセッティングして、鑑賞しながらの食事の始まり。機械的に食べ物は喉を通り、やはり機械的にその虚ろな視線はテレビ画面に向けられている。何も考えない、何も思わない。その心模様、久米の至福の時でもあった。 「ああ、イイわあ、このグダグダ感」     
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