『Up to one hundred souls of triplets』

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一講釈後、長瀬がジュースのストローに唇を挟むと、腕を組んで黙って考え込んでいた久米も口を半開きにして頷き、 「ああ、そう言えばそんな事件があったかも。というか当時は少年犯罪の猟奇殺人化が激しくて、一年だか二年だかのスパンで全国各地、アブねえ事件が流行していたな。確かその前年くらいにもどっかで幼児の胴体と首を切り離した事件があって、その犯人が中学生だか高校生だったみたいで話題になっていた記憶があるわ」 「何か色々と覚えているじゃないですか、久米さん」 「だって犯人が当時の俺ら世代でさ、学校ではやたらと集会開いていたもん。しっかりとした自意識を持つやら、他人の命を粗末に考えるなやら、改めて道徳やら倫理めいた事を諭す啓蒙じみた集会を教室や体育館で連発。担任の教師も説法しまくり」 「そう言えばそんな時期があったかも」  と長瀬が言った直後に、久米が両腕を大仰に上げてアクビをすると、長瀬もつられて両腕をVの字に上げて、眠たそうに口を開き脱力感溢れる吐息を漏らした。それを見て久米が、 「マネすんなよ。シンクロするとモーホーに見えるだろ」 「いいじゃないっすか。俺たち二十代フリーターの男同士。似てるんすよ俺と久米さんは」 「そんな連中は今日(こんにち)いっぱいいるだろうが」 「久米さんも俺と同じゆとり世代でしょ?」     
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