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プロローグ
――クソっ! クソッ!
「ちくしょおおおおおおおおおお!!」
大きな建物。
東京ドーム二個分はあると思われる大きなドームの中には座席に座り、皆が皆全く同じ一点を見据え次の出方を見守る数多くの観客。
不思議と歓声は起こっておらず、皆が皆一心に一点から聞こえてくる剣戟を只聞きながらその様子を見守っている。
その内側――関係者席にはステージを見守る各種族の男女の面々も、同様にステージを見守っている。
その観客の目線の先から先程の咆哮が聞こえて来た。
天井からの照明で一際照らし出されている中央の正八角形ステージに二人の男女。
男の方は纏っている皮鎧がボロボロで、床に膝を付き、左腕が二の腕の半ばから無くなり、左太ももには鋭利な物が貫通した様に刺し傷が出来ていて、そこから尚も血が湧き出し、身体の至る所には擦り傷や切り傷も多数。
女の方も皮鎧はボロボロだが擦り傷以外の外傷は負っておらず、凛と立つ姿で男を見つめる。
数多くの照明が取り付けてある天井を仰ぎ咆哮を上げた春彦。
彼の前にはただ凛と立ち、彼の出方を見守る紗代。
対峙する二人。
紗代の右手に持っている輝く鉄の手甲剣には血が滴っている。
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