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膝を付く晴彦の右手には、ロングソードがギリギリのところで握られている。
「まだ開始2分も経ってないよ? やる気あんの? ハル君」
紗代が右手の手甲剣を晴彦に向け、挑発の意を言葉に乗せる。
天井を仰いでいた晴彦は目に涙を浮かべ、一瞬首を下げ、彼女を睨む。
まだ開始2分以内。
既に晴彦の損傷は激しく、左腕を失い、左太ももも刺され上手く機能しない。
故にもう勝敗は決まった様な物。
しかしそれでも尚晴彦の目は火が灯り続け、紗代に睨みを放つ。
「……ん?」
ガタガタな体をロングソードを杖代わりに支えながら立ち上がる春彦。
左足は傷の所為で痛みを抑える為にしっかりとは立たせない。
それでも視線は紗代に向けたまま。
「そんなにボロボロでまだ戦おうって言うの? もう勝負決まっちゃってるよね? それともやっと心構えが出来た? 遅すぎるけど……」
目を細め晴彦を睨む紗代。
「……これはぁ はぁ 油断だ。まさかここまで腕があるとは はぁっはぁっ 思ってなかった。流石は……前回の優勝者で……白銀の はぁ 片翼……なだけあるな ――っ! 紗代……」
喋り出す度に脳を焼く様に刺す痛みで顔を歪ませながらロングソードを右手に持ち、左足をしっかりとステージに立たせる晴彦。
「立ちやがった!」
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