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「あーそれかー。もうあたしは解析済みなんだけど? 『我が剣に纏いし火と闇の精霊よ、姿を現せ』」
紗代も唱え、春彦の出方を伺いつつ剣に魔法の付与を始める。
その手甲剣は赤熱し始め、次第に黒へと変わり果て、剣身が黒煙を吹き放つ。
「遠上様! その技は効かないと言った筈です!」
春彦側の関係者席に居る白ローブを着た少女様な外見の少年が春彦に向かって叫ぶ。
それを後ろから両肩を掴み制止する手に気付き、後ろへ視線を上げ確認する。
背後には格闘家装備の猫獣人の女性が首を横に振り、優しい視線を少年に向ける。
少年がその意を汲み取り再度視線をステージに戻し、不安な表情をしながら見守る。
「違うぞ はぁ はぁ これは……只の義手と義足だ……」
剣に纏っていた光が収束した。
すると剣先から木が生え、その木が失った腕へと伸び、腕を形成し始める。
それと同時に左太ももにも同様に木が伸び、左足全体を覆う様に形成し始める。
「ぐぅぅっ……!」
腕の痛みで苦悶の表情を浮かべながらも、痛みに耐える春彦。
「なにやってんの? 待ってて上げよっか。なんだか楽しくなりそうだしっ」
余裕の表情で薄ら笑いを浮かべる紗代。
尚も剣先からは黒煙が立ち上り、照明の光が遮られ、黒雲が天井を覆い尽くさんとする。
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