第一章 1

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「あぁ~」  毎日の業務。   「だる……」  コンビニ。 「なんで寝坊するかなぁ……」  ただいつもとは少し違うフライヤー清掃。 「絶対調子乗って飲みすぎたかアフター付けて飲み耽ってただろ……。羨まっ……」  俺――遠上春彦は、先輩の遅刻が原因で夕勤なのに夜勤業務のフライヤー清掃を任されている。    時刻は既に22時を回り、本来なら23時には出勤の先輩なのだが、今日はその先輩が寝坊で0時に出勤すると言う事で忙しくなる時間帯を前に俺がパパっと時間の掛かるフライヤー清掃を一人で済ませてしまおうと思い、勝手に手を付けている。  実際この業務は夕勤終わり間近の人が付き添ってレジを任される事になるんだが、今日に至ってはそれが出来ない。  0時まで一人なんだ。めんどい。  11時は何かと飲み終わりとかでコンビニに立ち寄るお客がいるからな。その前にだ。  今現在の客足は……皆無。  店内は俺だけ。  だからこうも独り言が言えるってのもある。  それでも店内カメラには録音されてるけど、それは良いよ。  偶に店長と副店長に喋り過ぎだって注意されるくらいだ。 「後で必ずなんか奢って貰お」  フライヤーのシンクをスポンジで擦りながらごちた。  こういう事があった場合は必ず何かと礼をしてくれる先輩だから結構グイグイ言えるのもある。  そうじゃなきゃ夜勤の業務なんて嫌がらせで放っぽりだすさ。  マジで二人いないとキツイし……フライヤー清掃……。手早く済ませても40分は掛かる。 「はぁ……」  ◇  11時40分。  ――♪♪~ 「お……」  聴き慣れた着信がレジ横の事務所から聞こえてきた。  これは先輩が到着前にいつも鳴らしてくるお知らせ用の着信だ。    事務所に入りデスクの上に乗ったスマホの画面を確認する。 「そろそろか、はいはい~」  容赦無く通話切断マークをタップ。  切断マークを、だ。  応答マークじゃない。  お知らせ用だから別に出なくて良い。  出てる間にお客さんがレジに来たらどうする。って言う感じでだ。 「50分には来てくれるか。それは良い事だけどちゃんと時間通りに来てくれ……」  事務所を出て途中で放っぽりだしてた新聞の纏め作業に戻る。  
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