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あれ以来、俺はことあるごとに脳裏を過ぎる不本意な映像に悩まされる日々に苛まれている。
アノ男、粟津帝斗を犯したあの晩の映像が頭の隅にこびりついて離れない。
涙に濡れた白い頬、
驚愕に蒼ざめた唇、
抵抗して首をよじる仕草に反して淫らな叫び声、
やわらかな栗色の髪を振り乱して抗う帝斗の一挙一動が頭の中を埋め尽くし、ぐちゃぐちゃにしていく。
あの時のことを思い出す度に激しく欲情し、全身があの男を求めて色めき立つ。
あの男に会いたくてたまらなくなる。
一番憎くて嫌いだったはずのあの男をもう一度この腕に組み敷いて、辱めたい欲望で飢え、のたまう。
こんな思いに振り回される日が来るなんて誰が想像し得ただろう、あの男は一体どこまで俺を苦しめれば気が済むのか。
奴の持つ毒に捉われつつあることを、この時の俺は自覚できずにいた。
◇ ◇ ◇
「俺を囲え――」
低い声でドスをかまし、奴の耳元ぎりぎりにそんな台詞をつきつけた。
そうさ、あんたのお陰で今は職も失くした状態だ。あんたが今まで俺にしてきたことへの償いだと思えば安い相談だろう?
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