報復の結末

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 それに――  この前みたいな目に遭いたくなければ、素直に従った方が身の為だ。そんな意味も含めてそう言った。  きっと蒼っ白い顔をして弱々しく首を縦に振るだろう、俺はてっきりそう踏んでいた。  だが粟津帝斗というのは、見てくれに反して案外図太い男なのだろうか。いとも簡単に俺の予想を裏切りやがったのに、蒼白な思いをさせられたのはこちらの方だった。  まるで懲りていないような勝気な視線で俺を見下げ、それは初めて会った時の印象をそのままに、他人を小バカにしたような不適な笑みをも携えて、クスッと鼻先で笑ってよこしたのには正直呆れ返った。  たった一度犯されたくらいじゃまるで堪えないというわけか、半月振りに会ったヤツの態度は以前と何ら変わることのない、高飛車な印象がそのままだった。  接待が終わったヤツを待ち伏せたホテルの駐車場で、相も変わらずの気障ったらしい高級車のキーを利き手の指に引っ掛けて、気だるそうにブラブラと回す仕草は、正直不快以外の何ものでもない。面倒臭そうに深い溜息をつきながらドアに寄り掛かり、侮蔑混じりの流し目が薄く笑っているのが分かる。
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