報復の結末

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「いい加減にしてよ。お前はもう事務所を辞めたんだから、僕とは何の関係もないじゃない? 勝手に辞めたのはそっちなんだし、お前を囲ういわれはないよ。面倒を見るいわれもない」  ひと気の無い広大な駐車場に響くのは、淡々とした口調の少しテノールのかかった甘ったるい声色。苦笑混じりの下卑た笑みにはおおよそ似つかわしくない雅な声色で、まだ言い足りないことがあるらしい。  ワサワサと髪を掻き上げながら、ねっとりとした上目使いでこちらを見つめると、しばしぴたりと視線をとめてヤツは笑った。 「ついでに言っておくなら二度と寝る気もないよ? この前のことで味を占めたりされたら迷惑だからね。ちゃんと断っておかなくちゃ……ね?」  呆気らかんと言い放つ。  クスクスと可笑しそうに鼻先を鳴らしながら言い放つ――  そんな態度に、全身の血が逆流するんじゃないかと思うくらいに熱くなるのを感じていた。  煮えたぎるといっても過言ではない。  車の鍵を弄んでいる白い指先、  くねっとドアにしなだれかかる細い腰元、  手持ち無沙汰にいじくっているのは指通りのよさそうなやわらかな髪。そしてこの上なく生意気な態度と殊勝な視線が加虐心に火を点ける。  今、この場でその高慢ちきな頬を殴り倒してやりたいような気持ちに駆られた。  我慢ならなかった。  二度と立ち上がれないようにこいつを引き裂いてやりたいと思った。
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