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全身をくまなく愛撫して、
もうアナタからは俺の唾液のニオイしかしない程に抱き締めて、
それでもまだ肩を丸めて小さくうずくまるようにしている姿も哀れでソソられるよ。
まださっきの恐怖が拭いきれないのかい?
そのせいかな、とっくに濡れていてもいいはずの大事なトコロも今日は乾いたままだね?
でも大丈夫。これ以上怖い目になんか遭わせないから。
「帝斗……平気だよ。潤滑剤をたっぷり塗ってあげるから。痛くなんかないよ?」
吐息とも声ともつかない興奮した言葉を吹きかけて、帝斗の耳元にしつこくしつこく、繰り返した。
何度も何度も、繰り返した。
そう、アナタに痛い思いなんかさせはしない……。
だからいつまでも怯えていないでそろそろ素直になりなよ。
素直になってアナタも俺のことを求めているんだって言ってくれ。
俺のコレが欲しいって、
俺のすべてを愛しているんだって、
言えよ、云え――――!
この時の俺は明らかにおかしかっただろう。
傍からみれば狂っていると思われても仕方がない程に、興奮して乱れていたのは確かだ。
この世で一番憎かった男に対する、これが報復の結末だというのならそれも悪くはない。
だってこんなにも甘やかで、艶かしくて心地のいい気持ちになったのは初めてだから――
俺の中にはもう彼に対する憎しみなんてものは存在しない。
在るのは心底愛しいと思う唯一人の男性を請い求める気持ちだけだ。
◇ ◇ ◇
放心したような彼を腕の中に閉じ込めて、そのすべてを愛しむように抱き締め、口づけた。
あんたが手に入るのなら、報復なんてもうどうだっていい――
- FIN -
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