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立ちなおりかた
「穂積さんあの人きっつい…話しかけにくいし」
陰口が聞こえて、落ち込むことがある。自分がやったことを悪し様にとられ、傷つくこともある。
そんな時、穂積は心を落ち着かせるためにやることがある。
イヤフォンをし、好きな音楽を流す。
そして、ふっと浮かんだ人物を動かして短編の小説を書く。優しい物語も、悲しい物語も、浮かんできたままに。
そうすると自然に心が落ち着いてくるのだ。
「誤解されない動き方を、考えるか」
怒りや悲しみが消え、解決策を考えようと思えるようになるまで、問題のことは考えないようにする。
それが穂積にとって一番の方法だった。
穂積はふっと思い立ち、綿貫に傷ついた時や落ち込んだ時にどうしているか聞いてみた。
「うーん…ひたすら紙に書いてます。その発言の真意とかを考えたり、自分の感情だったり。その紙の廃棄方法には気をつけなきゃならないですけど。」
やはり綿貫は新しい考え方を教えてくれる。
あえて問題と向き合うことで、自分の感情を宥めかつ相手の言葉の真意を知ろうとする。
今まで穂積がやろうとしてこなかったことだった。
「そういう涼さんは、どうなんですか」
穂積自身のやり方を伝えると、綿貫は目を丸くしていた。
「涼さんの書いた物語、読んでみたいです!…涼さんがよければ、ですけど」
「面白くはないかもしれないけど、今度見せるよ」
顔を見合わせて、微笑みあった。
綿貫の笑顔を見る。
それだけでも、少し落ち着けるかもしれない。
今度やってみよう、と穂積は思った。
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