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「桜って、儚いからこそ綺麗ですね。」 そう言って振り向いた綿貫の髪に、桜の花弁がひとひら。 穂積は手を伸ばしてそっとその花弁をとり、自らの掌の上に乗せた。 「儚いけど、こうして手を伸ばせば触れられる距離にいる。咲いていない時も、いつも近くにいる。」 掌の上の花弁をふっと吹きとばし、綿貫の柔らかい髪に手を伸ばす。 「…僕は、花じゃないです。」 少しむくれたような口調の綿貫の頭を、優しく撫でる穂積。 「僕にとって、怜は手を伸ばしても掴めない花だったから。今こうして触れられるのが、奇跡のようだ。」 人前でスキンシップをするのが苦手な綿貫が、珍しく穂積に抱きついた。 「…好きですよ、涼さん。」 穂積の顔が一気に赤く染まった。 桜の花弁は、2人を包むかのように風に吹かれ、舞う。 風の音と、互いの鼓動だけに耳をすませる2人。 桜だけが、2人を見守っていた。
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