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「うーん…」
綿貫は悩んでいた。カメラを買い、趣味で風景写真を撮っていたら穂積に自分の写真を撮ってほしいと言われたのだ。
穂積が映え、かつ綺麗な写真になるように。相手が恋人だからこそ、綺麗に撮りたい。
互いの家から近くかつ綺麗な写真が撮れる場所を探していると、ふっと「花言葉」の文字が目に留まった。
綿貫はなんとなく花言葉の一覧を調べてみた。今咲いているであろう、1つの花の花言葉に目を引かれた。
「…うん。これにしよう。」
次の休日、綿貫は穂積とともに川の近くに向かった。ふらふらと歩き回ると、タンポポがいくつか咲いている場所を見つけた。
「涼さん、タンポポ咲いてますね。」
「本当だ…もうそんな季節なんだな。」
穂積がしゃがみこんでそっとタンポポの花を手にとる。その瞬間を逃さず、綿貫はシャッターを切った。
「えっ」
驚いた顔でこちらを振り向いた姿も、1枚。突然だなぁ、と言いながらも微笑んでいる穂積を、夢中になって撮っていた。
穂積がタンポポから手を離し、綿貫の方に近寄ってきた。
「怜。」
ファインダー越しに見る穂積の笑顔も素敵だが、やはり直接見るのが一番いい。
「涼さん、タンポポの花言葉って知ってますか?」
困ったように笑う穂積を見て、綿貫は楽しそうに微笑んだ。
「タンポポの花言葉は…」
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