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眠り姫
ある日の出来事。
普段目覚めが良い綿貫が起きてこないことを不審に思い、穂積は様子を見に行くことにした。
「怜、体調でも悪い?」
呼びかけにも応えず、揺らしても身じろぎすらせず、人形のように眠る綿貫はさながら眠り姫のよう。
熱もなく、病気を疑うような症状もないのでしばらく様子を見ることにした。
眠ったままの綿貫の頬をそっと撫でる。
日に焼けにくい体質なのか白さを維持しているその肌は、陶器のように光ってみえた。
触れていると、体温が伝わってきて綿貫がちゃんと生きていることがわかる。
「怜…」
穂積が呼びかけても、涼さんと呼び返してくれる声はない。
綿貫の頬に手を当てたまま、穂積はいつの間にかベッドサイドで眠りに落ちていた。
「……さん、涼さん」
ふっと目を開けると、ベッドの上で体を起こした綿貫が穂積の頭を撫でていた。
「よかった、起きましたね。」
寝ていたのは綿貫の方だったのに、いつのまにか穂積が寝てしまって綿貫が起きたらしい。
起こしても起きなかったことを告げると、いろんなことが重なって疲れていたのかめずらしく深く眠っていたと綿貫は苦笑いしていた。
「まだ時間はあるし、どこかにご飯でも食べに行こうか、怜。」
「そうですね…涼さん。」
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