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石原一飛曹視点
帝国海軍では、士官は個室が与えられる。そんな寝室のうちの一つ、備え付けのベッドに腰掛け、ため息をつきながら石原一飛曹が目を向けたのは膝の上で眠っている直属の上官、成澤 霞少尉である。
(坂下少尉・・・無茶もいいところですよ・・・)
上官とはいえ、いい歳の女性を膝枕して理性を保つのは、若い盛の石原には相当の消耗を強いる事だった。
(まあ、手なんか出したらミイラになるまで血を吸われちまうな。)
上空で一年目の新人とは思えない腕前と判断力を見せる頼れる分隊長。新任当時は吸血人種のクォーターである彼女を白い目で見ていた一部の飛行隊員も彼女の能力の高さに自然と飛行隊の一員として認めるようになった。
(それにしても・・・この人黙ってたらやっぱり結構可愛いよな・・・)
ろくに手入れもしていない筈なのに艶やかな黒髪、新雪のような白い肌、紅玉のような瞳・・・
(ん?この人寝てたよな・・・何で目・・・開いてる?)
「石原・・・何でここに?」
初めて聴く彼女の素の声は、まだ幼さを残す少女のものだった。驚きから見開かれた深紅の目に、自分の顔が写っていた
「えっ!な、何で?なんで私部下に夜這いかけられてんの!?」
「ちちち違います!違います!私は坂下少尉に分隊長の事をまかさr・・・」
「わわわわかったから!わかったから!お前達が溜め込んでるのはわかったから入港まで我慢しろ!」
「だから違うっていっt・・・」
「貴様まだ言い訳するか!訓練弾の代わりにするぞ!」
ドタバタと暴れ回っている霞を何とか取り押さえようと奮戦していると、
「うるさーい!ちったあ静かにせんか成澤!」
飛行長の国木田少佐が怒鳴り込んできた。
「って、何で石原が・・・すまんかった、終わったら呼んでくれ。」
「ちょっ、待ってください!勝手に何かを察しないでください!絶対なんか勘違いしてますよね?!」
「成澤・・・お前みたいなガサツな奴でも貰い手が出来て良かったな。俺は嬉しい!」
「何でちょっと親父モード入ってるんですか!」
暴れまくる分隊長、勝手に感動してる飛行長、
(カオスだ・・・)
石原にはただ呆然と待つことしかできなかった。
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