3人が本棚に入れています
本棚に追加
「それにしても熱心に見てたなぁ。飛行機好きなのかい?」
少女は首を横に振る。
「今日初めて見た。とっても綺麗だった。」
「そうか!やっぱり飛行機はいいよな。俺も初めて見た時『これだ!』って思ったんだよ。」
「おじさん、あそこの基地で働いてるの?」
男は頷く。
「そうだよ。昼間の戦闘機は俺が乗ってたんだ!」
少女は目の色を変えて訪ね返す。
「えっ!本当!」
「そうさ。お嬢ちゃんも飛んでみたいかい?」
そう尋ねると、途端に目線を落とす。
「無理だよ・・・私吸血鬼だもん。きっとまともな仕事になんか付けない。今日だって、牙があるってだけで、目が赤いからって、みんな寄ってたかって・・・もう自分が嫌い!牙も、目も、全部呪われてる私が嫌い!私なんて、なんで生まれてきたんだろう・・・」
「お嬢ちゃん・・・」
男は膝を落とし、少女に目線を合わせて語りかける。
「お嬢ちゃんが辛い思いをしてきたのはわかった。でもな、自分から目を背けていちゃあ、なんで生まれてきたかなんて分かんないんだよ。」
夕焼けの空を見上げながら、男は続ける。
「空飛んでな、戦う時は、自分のことしか頼れないんだ。そういう時、人種だとか種族だとか、そういうのは関係なくなるんだ。俺から言わせてもらえば、そういう奴らはつまんない人間だ!つまんない奴の為に自分の人生くれてやるな!」
?そこでふっと微笑んで男は言った。
「綺麗な深紅の目だ。呪われてなんかいないよ。自分を大事にな。っと、家はここだな。じゃあ・・・」
「待って!」
立ち去ろうとする男を呼び止める。
「貴方の・・・名前は?」
「・・・国木田 英二。名前聞いてどうすんの?」
「国木田中尉ね、覚えた。私の名前は成澤 霞。覚えておいて。最高の飛行機乗りになってみせるから!」
少女の目には、先程とは違う輝きがあった。
最初のコメントを投稿しよう!