3人が本棚に入れています
本棚に追加
第一話:鬼と智将
大陸戦線 黄河沖
「くそっ!なんで大陸戦線に合衆国軍がいるんだ!」
陸軍の航空支援要請に答えてみればこれだ。
「少尉!あいつら国籍マーク付けてません!義勇軍ですよ!」
後席で石原一飛曹が叫ぶ。
「義勇軍にグラッドストンの最新作があってたまるか!」
既に部隊の半分が喰われている。
「少尉!後ろからぶつかりに来ます!!」
素人なのだろう、後方に肉薄しすぎた敵機をバレルロールですんでのところで躱す。
「こんの下手くそめ!!死ぬなら一人で死ねぇ!!」
悪態をつきつつうまいこと射線に敵機が入ってきたので、遠慮なく機銃弾を撃ち込ませてもらう。
「くっそ、キリがない・・・石原!今高度なんぼだ!」
「さ、三千です!」
「二十まで下げる。牽制射撃を続けろ。」
ラダーで機体を射線からずらし、緩横転で引きはがす。そのまま背面の姿勢で、最大荷重で急降下体勢に入れる。
「高度二千・・・・・千・・・・・五百・・百!今!」
急激に引き起こし海面高度二十メートル。この高度なら、敵機は海面との衝突を恐れて上空からの射撃が不可能となる。
「母艦のビーコンを捉えたぞ。」
「少尉!敵機が振り切れません!」
「こんちくしょうが!攻撃隊三番機より迎撃機へ、敵の攻撃を受けている。母艦より方位二八、距離四十!」
機銃弾を必死でかわしつつ母艦を目指す。
「クソッタレの鬼畜共め!戦争やるなら堂々とやりやがれ!!」
統一歴一九四十年。欧州列強の大陸進出を危惧した八洲帝国は、富陽帝国亡き後の東部アジアへの列強の進出を食い止め大陸における利権を手にするため、栄華国民党と華人社会党の連合軍との攻防を繰り広げていた。一方、同じく大陸利権を狙う合衆国は、八洲への経済制裁を開始。開戦の危機が迫っていた。
最初のコメントを投稿しよう!