第一話:鬼と智将

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国木田少佐視点 「司令長官、本気ですか?!成澤少尉を飛行隊長に?」 「そうしようかと考えている。士官搭乗員はどこも不足しているからな、成澤少尉のような優秀な人材を遊ばせるわけにはいかん。」 「断固として反対です!『人ならざるもの』に陛下から預かりし飛行隊を預けるなど言語道断!奴ら、いつ裏切るかわかったものでは無い!」 先程から繰り返される不毛な争い。参謀の一人の発言に第四航空戦隊司令長官 神岡 源次少将が遂にキレた。 「貴様さっきから聞いてりゃあ成澤が吸血鬼じゃあなんじゃあ言いよって!優秀な航空士官を遊ばす暇は無いと言っとるやないか、こんの石頭が!」 すっかり萎縮してしまった参謀の襟を掴んで続ける。 「差別主義者は海軍には要らん!こいつと同じ考えの奴はさっさと出てけ。」 突き放すように言った神岡少将はそのまま自席に戻る。 「さてと・・・怒鳴ってすまんかった。だが、我々は戦争に勝つ事が仕事だ。そいつを考えよう。」 「長官、意見具申よろしいでしょうか?」 「なんだ?言ってみろ国木田。」 「は。僭越ながら、成澤少尉はまだ飛行隊を預けるのには未熟ではないでしょうか。」 成澤 霞、十年近くも前に出会った少女が部下になるとは思いもしなかった。三年ほど前に再開してからの成長は目覚しいものがあるが、やはり彼女はまだ未成熟な卵だ。大事にしてやらねば割れてしまう。 「あれは十年に一度の逸材だ。どんどん育てていくに限る。」 「まだ彼女は新人と言っても差し支えない未熟な搭乗員です!先程の戦闘で受けたショックも癒えないうちにさらなる責任を負わせてしまえば耐えきれずに潰れてしまいます!」 「少佐、その時はその時だ。その程度の実力だったということだ。」 先程とは打って変わって突き放したようなく口調。 「新しい航空指揮官が必要なのだ、特に歴史の浅い艦爆隊にはな。若い搭乗員の中で最も見込みがあると見込んだのが成澤少尉だ。勝つためだ、キャリアも席次も性別も、もちろん種族も問わん。結果私が選んだのが成澤少尉だ。」 神岡少将は部屋を見渡し、締めくくった。 「佐世保入港は三日後、その時に新たな配置を知らせる。半年で隼鷹を立て直す。各員尽力せよ!」
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