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そこから感じる感覚は、普段感じる久遠のそれではなかった
身動ぎ
「ん……もう朝……か……?」
酷く聞き覚えのある、と言うよりは他人から聞いた時の自分の声はそうなのかと的はずれな事を考える
聡い久遠のことであろう、今発した自分の声が明らかに自分のものではないと察し怪訝な声とともに体を起こしてきた
そこに居たのは、純白の長髪と真っ赤な瞳の少女――――つまりは自分だった
寝惚けた久遠(体は私)はぼんやりとしばらく静止し、そして無遠慮に胸を鷲掴んだ
そして一言
「……………………お前の体か」
「中身が入れ替わって初めの言葉としては失格ね」
「理不尽すぎやしないかその物言いは……」
「心当たりは?」
世にも珍しい自分の姿をした人間と自分では無い体で会話をしているそんな状況だが、慌てていても仕方が無い
しかし、眉間にしわを寄せ鋭い目付きで顰めっ面をした自分の顔は、率直に言って人相が悪すぎる
久遠は私の顔でそんな表情をしつつ顎と腰に手を当て思案する、だが心当たりは何も無かったのだろう、眉を僅かに下げ肩を竦めた
「さっぱりだ、何もわからん」
「昨日寝る時は何も変わりなかったわよね、他に何かあったかしら……」
「……あ」
「……?」
「昨日討伐した魔性、死に際に変な液体を撒き散らしただろ」
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