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「時間が無い、話しなら気が向いたら聞いてやる」
少し言葉に怒気を孕ませる
あまり本意ではないが今ここで変に問答をするのは時間をいたずらに消費するだけだ
多少強引でも行こう
それにしても、こうも露骨なのに久遠は全く気がついていないあたり、やはりそこら辺の知識や感覚は完全に欠落しているのだろう
嬉しくもあり悲しくもあるところだ
「…………分かりました、ではまた後日」
「あぁ、気が向いたらな」
「僕は貴方を諦める気は毛頭ありませんので」
「そうかい」
踵を返して足早にその場から去る
変に長引けば何かを察せられそうな今、早く動くに越したことはないだろう
努めて冷静な顔をしつつ、依頼主の元へと再び進む
「…………フリをするには下手ですねぇ、『九尾』さん?」
―――――――
―――――
あれから数時間後、久遠は恙無く依頼を終えて街中で休んでいた
店先に椅子を用意した甘味処で団子とお茶に舌鼓をうちつつ、九尾の帰りを待っていた
幸い入れ替わりを誰かに悟られることはなくここまで来れたのはひとえに九尾を普段より良く見ていたおかげであろう
細かな所作などにはやはり違和感を伴っていたのだろうが、それでも注意深く観察しなければわからない程度にはフリをうまくできていたと思う
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