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運動不足を痛感した。
おまけに手や顔、それに服まで真っ黒だ。
「えと……」
まずは礼だよな。
「礼やったらいらんで」
がこん、という振動の後、機関車が改めて動き出す。
「結構揺れるから、どっか捕まっとき。後、暑いんもがまんしてや」
おっさんの言うとおり、結構熱いし結構揺れる。隅っこに座っているけれど、尻が早速痛い。
「俺が来た時には、こんなもんなかったでな。だいぶマシになったでホンマ」
「へ、へえ……」
機関室の隅っこにある黒い箱がけたたましい音を立てた。
思わず身がすくむ。
「うっさいのぉ。すまんな、兄ちゃん。多分車掌やわ」
そう言いながら、黒い箱についていたスイッチをプチっと押す。
もしやそれは通信機ですか?
「ちょっと、何急に止まってんすか!!」
飛び出してきたのは、やっぱり流暢な日本語だった。
「人助けや、しゃーないやろ」
「ですが、列車の到着時間と言うのがですねぇ」
「アホか、そんなもん目安やろ。JRかてしょっちゅう遅れてたやん」
JR……。
聞きたくない。
こんなところまで来たのに、何その日本感。止めてよ。泣きたくなってきちゃうよ。
「それにはちゃんと理由が……」
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