異世界の車内から

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「ほんなら理由つけとけや。線路の点検でも車体の点検でもええがな!!」  おっさんは機会に向かってそう怒鳴ると、スイッチをもう一度押して一方的に通話を終わらせた。 「ホンマに、最近の若い奴は融通が利かんで」 「……ここ、日本ですか?」 「ちゃうよ。ここはスピロイト。自分らでいう所の異世界っちゅーやっちゃな」 「でも……」 「日本みたいやろ。最近日本人が増えたからなぁ。俺もそうやし、さっきの車掌も日本人やで。あ、名乗ってへんかったな。俺は赤松っちゅーねん」 「あ、鉈出って言います」 「ふーん、けったいな名前やな」  いや、日本人に言われても……。 「まあええわ。ようこそスピロイトへ。ここは日本人だらけの異世界やで」 「ええ……」  何でそんな事に。 「何でやねんって思ってるやろ」  関西人じゃないから、そうは思ってないけど。 「自分、どないしてこっち来た? なんか、死にかけたんと違う?」 「そ、そうです……」 「せやろ? 俺もや」  登山中に滑落したんだそうだ。 「年間、死者と行方不明者合わせたら、ちょっとした都市ぐらいの人間が減ってるわけや」  神戸ほどじゃないけど、姫路なら二回は消し飛ぶとかなんとか。  関西の都市はよく分かんないけど。     
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