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月見里『確かに。韓国のコトワザで【ウジが怖いからといって、しなければならない味噌作りを止める事が出来るだろうか?】という文句があるからね。例え危険を伴っても、やりたい気持ちは抑えきれない。ある種アンビバレンスな感じも受けるが、君の抱いている思いには共感も覚えるよ。ただ願わくは、どうして僕に対してその殺意が募っていったかを聞きたいな。そう、インセンティブの過程を。何らかのモメントや理由が君にもあるだろう。一方的すぎて、さすがの僕もそのハプニング性に違和感を覚え、うろたえてしまうよ。それに判断に苦しむ部分があるのも否めない。僕としては問題ない良好な人間関係を築いていたと思っていたからね。是非、君の忌憚のない正直な真意を窺ってもたいものだね』
新愛『そうかな。いや、そうだよな。突然これから殺されるって事になると、臨機応変には承諾は出来ないよな。でも安心してくれ。ちゃんとしたお前への殺害の動機はあるから』
月見里『それは良かった。それなら納得できそうだ。でもその話を聞く前に、僕の面前に突き出している、そのナイフをいったんテーブルの上に置いてくれないか。それを目の当たりにしていたら、落ち着いて君の聖アウグスティヌスばりの告白を聞けないよ』
新愛『別に懺悔するわけではないんだが』
月見里『どちらにしても、清廉な心境で対応するには困難な状況だ。せめて、その凶器の威嚇を緩める事に同意してくれないか』
新愛『そうだな。プレッシャーという面ではフェアではないからな。まあ、それは構わないけど、このナイフを取ろうとはしないでくれ。これはお前を殺るためのツールなんだからな。それにすぐ持ち直せるように俺の傍らに置いておくから、盗ろうとしてもお前の行動は徒労に終わるぜ』
月見里『今のはダジャレだね』
新愛『そうだ。面白かったろ』
月見里『ああ、笑えた』
新愛『こういう緊張感溢れるシチュエーションでもユーモアは大事だからな』
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