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この桜並木を彼と歩く日を待ちわびていた。
天気も良く最高のデート日和なのに、私の気分は浮かない。
ここを彼と歩くのは、おそらく今日が最初で最後になるから。
待ち合わせ時間より30分早く着いた。
彼といつも通り楽しい時間を過ごすために、あらかじめ心の整理が必要だった。
彼に借りた本をそっと開く。
彼は一度読んだ本は読み返したりしない。
だから、そこに桜の花びらをそっとしのばせた。
彼には幸せになってほしい。けど、できればいつか、一度でも私を思い出してほしいから。
いつも落ち着いていて、私のどうでもいい話に真剣につきあってくれる。野心家で努力家。間違ったことをしても、素直に認めて正そうとする強い人。
口調が強いから、たまに嫌な人だと思われてる。それをちょっと気にしてる可愛さもある。
人に頼ることが苦手な私なのに、彼に頼るのも甘えるのもとても心地よかった。
しばらくして、遠くに彼の姿をみつけ駆け寄る。
すこし微笑んでいるのがわかる。
他愛もない話をしながら桜並木を進んでいると、このままでいいんじゃないかなぁ、と思えてくる。
けれど、私たちの未来は別々のところにある。
彼とさえ一緒にいれば幸せだと思っていたのに。
本当の幸せとは…何なのだろうか。
「あ、これ。読み終わったから返すね。」
彼に借りた長編小説の第10巻を返す。
「読むの早かったね。先に言ってくれたら今日続き持って来たのに。」
そう言う彼の言葉に返事を濁し、彼の手を握り、再び歩き出した。
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