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初めて見た生キスシーンの衝撃
そんなわけで、僕は暑い暑い10日間を耐え抜いて、ここにいる。部活の最中に過労で倒れた都築は手足を打ったり捻ったりしてしまい、医者から全治1か月の宣告を受けている。その頃に行われる県大会までは舞台に立てず、その前に出場のチャンスを失うことは、舞歌も他の部員も到底できない話なのだった。
そこまでは、先輩も察してくれたようだった。
「ああ、そういうこと」
もっともらしく頷くのに何か皮肉っぽいものを感じて、僕は問い返した。
「何ですか?」
月の光を浴びながら、真剣な表情をした顔で先輩は告げた。
「でも、私には関係ないの」
「そうかもしれませんが」
あの痣を見せられたら、そう答えざるを得ない。でも、涼美先輩の抱えた事情は、僕の理解を上回っていた。
「……命かかってる」
自分の呼吸が止まるのを感じて、次の言葉がなかなか出なかった。
「どういうこと、ですか?」
やっとの思いで尋ねると、先輩は怖い顔をしてみせた。
「覚えてるでしょ、あれ」
それは、過去の悪事を引き合いにして子供を叱るときの母親そっくりだった。
1週間前のことだった。
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