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合宿の夜、先輩と
月の明かりが差し込む教室で、僕は3年生の風間涼美先輩と2人っきりで向き合って座っていた。斜め上から窓格子の影が落ちているのに、そこに隠れた先輩の顔はドキっとするほどきれいだった。
「ねえ、三坂くん」
教室の椅子にもたれて、タンクトップにパーカーを羽織ったジャージ姿の先輩はまっすぐに僕を見つめた。
「は、はい」
そんな目をされると、背もたれに沿って身体をまっすぐに伸ばさないわけにはいかない。いかに1年生とはいえ、一応は三坂朔も男なので、真面目にやってないとちょっと理性に自信がない。
僕の緊張を察したのか、先輩は名前の通り涼しく美しく微笑んだ。
「約束だったでしょ、本番までって」
「……はい」
よけいに堅くなって、うつむくしかなかった。
そう、本番が僕のゴールなのだった。だから、今夜がタイムリミットなのだ。
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