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昔っから、これを何十回繰り返されてきたか分からない。随分な無茶振りもあったけど、僕はそれを一つだって断ったことがない。というか、舞歌が頼んだ時点で聞かなくちゃいけないというのがデフォルトになっていた。
「何だよ、改まって」
この時点で、僕はもう言いなりモードに入っていた。OKしたときの笑顔が、僕はたまらなく好きなのだ。
でも、下心なんかない。
中学校まで舞歌はそういう相手じゃなかったし、僕もそういうことには興味がなかった。
それが変わったのは、入学式の終わった日の午後のことだった。桜の花びらが舞い散るなかで見た、舞歌のブレザーがドキッとするほどかわいかったのだ。
何だか胸の中がもやもやしだして、入学式まではいつも一緒に学校行ったり家帰ったりしていたのが照れ臭くなった。舞歌も演劇部に入って忙しくなったのか、学校でしか顔を合わせなくなった。
クラスも別々で、5月の連休明けの中間テストが終わってみたら、舞歌は学年トップで、僕は赤点の補充授業グループになっていた。そんなわけで、帰る時間帯がたまたま同じになったのが僕のドキドキにとどめを刺した。
補充授業の初日、薄暗くなってからとぼとぼ独りで帰るところに呼び止められ、紹介されたのが2年の都筑幸威だったのだ。それからというもの、仲良く部活行ったり帰ったりするのを見るのがすごく悲しくて、僕は必死の勉強で補充を終わらせた。
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