僕はもともと帰宅部ですが何か

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 やっと終礼と同時に帰れるようになったのに、また部活やってる舞歌と顔を合わせる羽目になったのは、今年最大の不幸だったと言わざるを得ない。  ただ、気になったことがひとつあった。終礼が終わると舞歌のそばにいつもいる都筑の姿がないのだ。たまたまってこともあるけど、それはそれで気が楽だった。  でも、その幸せは舞歌の一言で打ち砕かれた。 「部活入って」 「はい?」 「演劇部に」  何が何やらさっぱり分からなかった。声をかけられたのは嬉しかったけど、都筑と顔を合わせるのはつらかった。だいたい、帰宅部生活にすっかり慣れてしまった身体で、暑い夏の日を生き抜けるとはとても思えなかった。  でも、舞歌は僕が断るなんてことはたぶん、考えていなかっただろう。薄い胸の前で手を組んで、じっと見つめてくる。 「ずっととは言わないから、夏休みまででいいの!」 「わけわかんない」  アテにされているのかいないのか、そこらへんをはっきりさせてほしかった。 「このままじゃ地区大会出られないの」  部活のことなんか全然分からないのに、いきなり大会がどうのと言われても困る。聞きたいことは言葉にしきれないくらいたくさんあったので、一言にまとめて聞いてみた。 「何で?」 「都筑君倒れた」     
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