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「痛い・・・・・・痛いいいぃ・・・・・・痛いぃぃ・・・・・・」
両ももにサバイバルナイフを突き立てられ、尻もちを付いている金崎純一を、浅川真子が見下ろしている。
浅川は、右足を上げると、金崎の左ももに刺さっているそのナイフに足を乗せ、ゆっくりとかき回した。
「うわあああぁあぁぁっ!!」
うずくまり、痛みに耐えていた金崎の体がのけぞり、叫び声が室内に響く。
「待って!」
思わず私は声を上げてしまった。
右足の動きを止めた浅川が、静かに振り向いて、私を睨んだ。
「まさか、今更、可哀想とか、やめてとか言わないわよね」
浅川は少し上目づかいに、それでいて真っ直ぐに私を見据えている。
私は小さく首を振った。
「わ、私にもやらせて・・・・・・いえ、後は、私に・・・・・・」
震えた声でやっとそう言うと、浅川は無言で二歩下がり、右手を開いてゆっくりと斜めに振り下ろした。「どうぞ」という合図だ。
「お前、こんな事して、ただで済む・・・・・・ぎゃあああぁぁ!!」
良かった。
命乞いなんてされようものなら、私は何も出来ないで固まっていたかもしれない。
でも、この男は、この期に及んで、まだ私を脅そうとしている。
私は最後まで言わせまいと、金崎の前にしゃがみ込むと、そっと右足に突き立てられているナイフを斜めに倒してやった。
金崎の喚き声を聞きながら、何故かここまでに至るいきさつが、走馬灯のように蘇ってくる・・・・・・。
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