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執行
完全に私を支配していると思い込んでいる金崎は、一心不乱に私に吸い付いている。
私は目を閉じて、その時を待っていた。
入り口の方から、扉の閉まる音が、微かに聞こえた。
その後に、注意して聞いていないと聞き取れないほど小さく、絹の擦れるような音がする。
浅川もまた、衣服をそこで脱いでいるからだ。
返り血で、衣類を汚さないために、そこに着衣を置くというのも、浅川の指示だった。だから、私も入り口で脱いだ。
目を開けて待っていると、壁の角から、静かに近付いてくる影が視界に入った。
上になっている金崎は、まだその存在に気付かない。
「ねえ・・・・・・」
突然の背後からの声に、金崎の体が跳ね、そのまま勢いよく上半身を捻って振り向いた。
そのまま金崎は、無言のまま浅川を凝視した。
上目遣いに睨む細い瞳、薄く切れ長の唇。日本人形のように、真っ直ぐに伸びた漆黒の髪。真っ白というよりも、透明に近い肌。触れれば折れそうな細い体。
浅川を知っている私でも、この人は幽霊なのではないかと思ってしまう。
しかし、金崎は恐怖が半分で、残りの半分は、目の前の美しい女体への好奇心のようだったが。
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