執行

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 金崎は、ゆっくりと体を起こすと、ベッドから降り、浅川の前に立った。  その視線は、浅川の顔と胸元を交互に見ているように見える。  だから、気付かなかった。  浅川の両ももに装着されている黒いベルトに。  そして、そこで携帯されているソレに。 「だ、誰だ、お前は」  声は震えているが、いきなり目の前に現れた美しい女性への興味の方が強いのだろう。  金崎は、ゆっくりと体を起こすと、そのぶよぶよした右手で、浅川の胸を掴もうとした。 「もしかして、三浪(みなみ)の・・・・・・」  言いかけた金崎を、浅川は軽く両手で後ろに押すと、そのまま両ももに装備されていたサバイバルナイフを抜き取った。 「精神と肉体を深く傷つける行為は、殺人の何万倍も重い罪と知りなさい」  浅川は、それだけ言うと、サバイバルナイフを金崎の両ももに突き刺した。 「ぎゃああぁああぁぁぁっ!!」  その痛みで立っていられなくなった金崎が、その場でしりもちをつきながら、両ももに突き立てられたナイフに手を伸ばす。  その手は、ナイフの柄の手前で震えている。  ももに深く食い込んだナイフを抜くという行為は、それだけで恐怖なはずだった。  左もものナイフをゆっくり握ったが、それを抜くのにも躊躇している。
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