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完了
足元に転がっている肉塊を、私は冷めた目で見ていた。
それは、もう呼吸をすることなく、心の臓も脈打つことを止めていた。
「これでもう、私を苦しめる者は、いなく、なった、のね」
私は、確かめるように、一度そいつを足で転がした。
そうやってみても、金崎はもう、ピクリとも動かない。
「さあ、返り血を流して、ここから出るわよ」
浅川に言われて、私は一度頷くと、浴室に入った。
シャワーを浴びながら、段々と冷静になっていく自分がいた。
ー私は、この手で、人を、殺し・・・・・・たー
自らの両手を見ながら、改めて体が震えた。
それは、喜びからなのか、恐怖からなのか。
どちらでもいい。
私は解放されたのだ。
少なくとももう、自ら命を絶とうなどとは思わなかった。
金崎の穢れた血が流れていく様を見ながら、自らも清められていくような気持ちになる。
足元を流れるピンク色の液体は、徐々に色を失い、透明になっていった。
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