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「今度は私が洗いますね!」
「お願いします」
神谷さんは目を細めると、私の座っていた小さなバスチェアに腰を下ろす。私はシャンプーを泡立て、神谷さんの頭の上に乗せた。
最愛の人と身体を洗い合い、温かいお風呂に浸かる。
こんな幸せが待っているなんて、昔の私には想像も出来なかった。タイムマシンがあるのなら、過去に戻って天パを恨んでいた私に言ってあげたい。
今は辛いことばかりだけど、大丈夫だよ。社会人になったら、素敵な美容師さんに巡り会えて、「興味深い天パだ」なんて言われて、仲良くなって、付き合って、同棲もしちゃうんだから、って。
「いよいよ、明日か」
二人で湯船に浸かると、湯気で白んだ天井を見ながら、神谷さんが呟いた。
「やめるなら今ですよ?」
「やめる? こんなに好きな人との結婚を?」
神谷さんがおどけて、私の顔を覗き込んだので、思い切り吹き出してしまった。
明日、私たちは結婚する。朝、役所に婚姻届を出しに行き、その後は結婚式だ。
天パのおかげで、神谷さんに出会えた。天パのおかげで、神谷さんと付き合えた。天パのおかげで、世界一幸せになれた。
ありがとう、私の天パ。
湯船で神谷さんと揺蕩いながら、私は天パに感謝した。
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