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私の髪は、生まれた時から極度をゆうに超える、超、超、超天然パーマだ。赤ちゃんの頃でさえ、写真を見るとパンチパーマをかけているのか、と思うくらいの巻き髪で、成長するに従って、むくむくとボリュームが増えていった。大学生になるとストレートパーマをかけるようになったけれど、どんなに強くかけても、荒ぶるうねりは無くせない。パーマをかけたては、一見するとドレッドヘアのように見えるので、ストリート系が好きな人に見せかけられるけど、一ヶ月も経つと、アフロ感が出てきてしまい、髪を濡らそうものなら、アフロを通り越して、ブロッコリーのような頭になる。
散々、あちこちの美容院で痛い目に遭い、美容師のシャンプーがトラウマになっていた。二年前に就職で上京して神谷さんと出会い、初めて他人にシャンプーしてもらう気持ち良さがわかった。
「今だから言えるけど、やっぱり初めて会った時は、すごい天パだな、と思ったよ」
神谷さんは、申し訳なさそうな声を出した。
その時の私の顔は、下手くそな化粧が涙で落ち、幼児の塗り絵のようになっていた。神谷さんは私の顔を見て、言葉に詰まったのだと思っていたけれど、やっぱり天パに気を取られていたのか。
「だから飛び込みの客なのに、神谷さんが相手をしてくれたんですか?」
「手が空いていた奴は、俺と若い奴しかいなかったから、俺がするしかないでしょう」
それは、私が会社に入社して二週間が経ち、社会人生活にも慣れ、心に余裕が出て来た頃の出来事だ。私は出社早々、上司に呼び止められた。
「新人、その髪は何だ?」
上司の語気は明らかに荒く、私は部署の入り口で固まった。
「朝帰りか? それとも夜遊びの準備か?」
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