職場辞めたった

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職場辞めたった

 俺の名前は新戸 誠也(にいと せいや)二十二歳だ。 先程、四年間お世話になった職場を辞めてきたところだ。 今日から俺はニート生活を謳歌する。 この日の為に汗水、鼻水、垂らして貯めたお金はざっと一千万!! 我ながら頑張った……。 「誠也~」 後ろからは聴きなれた声が聞こえてくる。 振り返るとそこには幼馴染で職場でも一緒だった神崎 麻衣(かんざき まい)が手を振り、長い金髪をなびかせながら駆け寄ってくる。 「どうしたんだ?そんなに急いで」 「どうしたんだ?じゃないわよ!誠也が辞めたって聞いたからもしかしてと思って来たんじゃない」 麻衣は呆れた物言いで続ける。 「まさか本当にニート生活とやらをやるわけじゃ……」 麻衣の言葉を遮る様に俺は喋り始める。 「ご名答!その為に高校を卒業してから四年間頑張ったんじゃないか」 そう、親のすねをかじる事だけはしたくなかった為に四年間、ニート生活の資金作りをしていたのだ。 「どうせ、すぐにお金が尽きるわよ」 お金がすぐに尽きる?ハッ、そうならない為に貯めたんだよ。 「とにかく仕事に戻れ!俺は今から忙しいんだよ!」  麻衣と別れてから家に帰り、姉の桜花(おうか)の部屋の前に来ていた。 「ガチャッ、桜花~入るぞ~」 「おい!ノックくらいしろ!あと、お姉ちゃんって呼べって言ってるだろ!」 そう、この真昼間から家でパソコンゲームに勤しんでいるのは紛れもなくニート生活を謳歌している姉だ。 俺がニート生活に憧れを抱いたのは紛れもなくこの姉のせいだ。  ニート初心者の俺は姉に弟子入りするべく今ここにいる。 「何の用だ?用がないならあたしの神聖なる部屋から出て行きな」 「桜花……いや、桜花姉さん、ニート生活の伝授お願いします!!」 そして、桜花がパソコンを操作する手を止め、こちらを一瞥する。 「ニートはお前が思っているほど簡単ではないぞ?」  俺は桜花のその堂々たる言葉に()おされ、唾を一つ飲み込む。 そして桜花が続ける。 「まずは最初に必要な物を全て用意することだ。パソコンからなにからなにまで」 む……難しい…… 「もう少し詳しく何が必要か教えてくれ……ください」 「いや、それはあれだ……男と女では必要なものが違ってくる……あぁ!もう!そんなことも分からないのならお前にニートライフなど送れん!」
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