あの桜は

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 せっかくの休暇を怠惰に過ごし、そんな自分に嫌悪して、身体も心も虐める。わかっていても変えられない。 「?」  大抵こんなときの暇つぶしはテレビだった。  目的もなくテレビを流しっぱなしにして、暇の時間を誤魔化す。 「さくらの日か」  なんでも今日は『さくらの日』らしい。  そうか。そうか。もう春が来ているのか。そういえば暖かくなって早朝出勤が楽になってきたと感じていたところだった。  季節感すら仕事の疲れに埋もれてしまっていた事実を認識されて、私は絶望する。  いやいや。まだ大学出たての二十代ですよ? これは無いんじゃないかな。だめでしょ。この間だって散々思い知ったところじゃない。飲み会のとき、女子高生だったころ〝ああはなるまい〟と指さして影で笑っていたOLたちにそっくりだったんだから。完全にオバサン化してたんだよ。頭の片隅で青ざめてたんだよ。酒に酔ってゲラゲラ笑って、男を馬鹿にして、未婚を自慢して、三十になったらどうするなんて話してたんだよ。まだ先なのに。まだ二十代なのに!  このままじゃ季節に置いてけぼりされて、気づいたらアラフォーだったとか最悪っ。  私は奮い立った。  このままではいずれ寂しい人生なると気づかされたのだ。  まずは外に出よう。幸い今日は理由ができた。さくらの日だ。桜を見に行こう。     
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