あの桜は

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 自分でもきっとどうかしてると頭の片隅で思う。けれど、このままでは駄目だという意思が強かった。突き動かされるように私は身支度を手早くすませて、春の到来を知らせる暖かな陽気が包み込む外界へ飛び出した。 さて、どこへ行ったらいいのだろうか。桜の名所なんて多すぎて、どこへ向かっていいものかわからなくなる。とりあえず近場に行ってみよう。  今やネット時代。困ったときは検索。  一つ駅を過ぎて、駅から十五分程度のところに桜の花見場所があるらしい。  ここにしよう。河川敷の桜並木。近くには喫茶店もあってお昼に困らない。  ちょっと急げばランチタイムに間に合いそうだ。紹介メニューのオムライスが食べたくなった。  移動時間は合計して三十分程度だった。  まだ時計は十二時にもなっていない。これは急いで来る必要もなかったかな、とちょっと思う。とはいえ、満開の桜には拝めた。  圧巻、とはまではいかないけれども、とても綺麗だ。舞い落ちる桜が川に届いて流れていく光景は幻想的で、だけど、どこか懐かしい。  おっと。  学生らしき女の子三人組だ。まだ初々しい化粧などのおしゃれが可愛い。  手探り感があって、微笑ましかった。仲むつまじいとはこのことか。私も、学生時代は友達とはあんな感じだった。     
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