あの桜は

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 あれが変わったのは一人が結婚してからか、それとも彼氏を持ってからか。違うか。好きな人が同じで、一人が抜け駆けしたからだった。あれからどこか心を探るようなことが増えて、今では連絡すら取ってない。  形だけの友人はたくさんいるけれど、あれだけ心の内を話せた友達にはもう出逢えないだろう。  懐かしくて。  目に感じた眩しさが太陽の光か、過去の幻影のせいかわからなくなってしまう。  とんっ、と一本の桜の木に身を寄せて涙を隠した。桜の木の下で白く淡い桜色の花たちに隠れて顔を俯かせる。ちょうどいい高さで花を咲かせている桜があったのだ。 誰にも見られたくないから、髪を伸していて良かったと思う。  桜が散る。  世界を彩る。  儚くて、可愛くて、綺麗で、懐かしくて、暖かくて、安心する。  哀しみも、切なさも、苦しさも、あの薄い桜色の向こうに見える。  やっぱり外に出なきゃよかった。  こんな懐かしさに苦しむことなんてなかったんだから。  学生たちの声が聞こえる。楽しそうな声で羨ましくなる。  あなたたちの見る桜は、私たちがかつて見たあの桜と一緒にだろうか。聞きたくても、相手も自分もわかるはずがないのは、わかり切っていて。  涙が止まったら、まずはメイクを直そう。  それから喫茶店に寄ってオムライスを食べるんだ。この損した気持ちの元手を嫌でも取って帰ってやるんだからっ!  私は何度も涙を拭った。  何度も。何度も。 桜並木道を行く彼女たちを、もう見ることなんてできなかった。  何もかも吹っ切れて、すっきりして帰路に着くのは今日の夕暮れどき。     
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