医局対抗バレーボール大会

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医局対抗バレーボール大会

ネット越しに生真面目な表情の9人の研究者が並んでいる。胸には何やらアルファベットで「DNA Lab(研究室)」と書かれている。背中にはクルクルと回る市松模様のような絵が描かれていた。そう、あれは二重螺旋(らせん)構造。DNAの立体図だ。 山下先生はバレーボールのコート上で武者震いした。彼の胸には「Ishida Orthopedics(石田整形外科)」と書かれている。 「今日の相手はDNA研究室か。せっかく有休取って出てきたんだ。悪いが勝たせてもらうぜ。あの方に見ていただくためにも!」 試合開始。彼がスパイクを打ち、どんどん点を獲っていく。一方的な展開のままマッチポイント。 「レシーブ! いいぞ。トス!」 「山下先生、任せたーっ!」 「任せろ! よし、アタック! よっしゃーっ!!」 試合終了。山下先生は得意の絶頂にいた。あの方の前で、DNA研を撃破したんだ! 「山下君、わざわざ遠くからありがとう!」 「教授……」  大学病院の本院は、ややもすると殺伐とした雰囲気になりやすい。大学病院には本院と分院とがあり、さらに派遣(関連)病院もある。会社で言えば、本社と支社、そして傘下の出向先と言えば雰囲気もわかっていただけるかと思う。本院は何かとギスギスしがちだが、分院や派遣病院に行くと和気藹々(わきあいあい)と仕事をしている。本院では各科の教授vs教授、診療科vs診療科の意地の張り合いが多い。病院内で他科の先生とすれ違うとき、何かとんがったものを感じる。
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