増えるミルクティー

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 朝起きて職場に行くとY子は眉をひきつらせた。彼女のデスクに、紙コップに入ったミルクティーが置かれていたのだ。知らない相手から差し入れがあるのはこれでもう四度目だった。ミルクティーは大好きでよく買っているのは事実だが、こうも続くと気持ち悪い。  Y子は今年で二十四になる若手のOLだった。容姿に恵まれていた彼女はこれまでに異性からあらゆるアプローチを受けてきた。中には非常に悪質でストーカーじみたものもあった。今回もその手のものかと彼女は疑った。  そこでY子は上司のK氏に相談をすることにした。K氏は今年で四十三になる男の部長だ。要するに彼はY子が働く部署で一番偉い役職に就く人物だが、それにしては能力は冴えずコミュニケーションも下手で、教育的でもなかった。ルックスも特にいいわけでもなく、やはりというか、独身だ。どうしてこの男が部長になれたのか、職場の誰もが不思議に思っていた。 「あの、部長」 「どうしたんだい、Y子くん」  Y子は、自分のデスクの上に毎日のようにミルクティーが置かれるという不思議な現象についてK氏に話した。頼りないが立場が一番上の人間に話すのが最適だと思ったのだ。 「そこまで神経質にならなくてもいいんじゃないかな。きっと誰かが気をきかせてご馳走してくれているんだよ。それに君はミルクティーが好きなんだろ? むしろ感謝してもいいんじゃないかな」  楽観的な彼の意見を聞いてY子はがっかりした。なんて頼りない上司なのだろう。
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