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もちろん、この物語を読んでいるあなたも、たぶん1分もあったらわたしをこてんぱんに……いや、やめてね? イジメないでね? 仲良くしてね?
と、とにかく、強いものには巻かれろなのです!(作者より:正しくは「長いものには巻かれろ」です) わたしの場合、世界のおおかたの人間がわたしよりも強いけれど!
「ばく! ばく! ばく! ちから、かえせばくぅ~!」
わたしが殺し屋小学生に500円玉を差し出しているあいだも、わたしの頭を噛みつづける赤髪のおチビさん。何なんだろう、この不思議な状況……。
「……ふぅ~ん、こいつが夢幻鬼バクか。すっかり弱体化しちゃってるわね」
殺し屋小学生は、わたしのことなんか無視してそうつぶやくと、ガムをぷくぅ~とふくらませながらスカートのポケットからなにかを取り出した。
女の子の手のひらにあるのは、八角形のお堂の小さな模型。
わたしのお父さんがお城やお寺の模型を組み立てて部屋に飾るのが趣味だから、わたしはよく知っている。
あの模型は、法隆寺にある夢殿という建物にそっくりだ。そうそう、聖徳太子さんゆかりの有名なお寺ね。
あの~……なんで、トートツに模型なんて出してるんですか? 500円いらないんですか? それじゃあ、財布にしまってもいいですか?
「おい、そこのへたれ妄想女子。いまから、ちょっとのあいだ、夢の世界についてきてもらうわよ。むこうで、オオクニヌシさまが待っているから」
オオクニヌシ?
それって、日本神話に出てくる神様の名前だよね? ワニに毛皮をはぎとられて泣いていた因幡の白兎を助けたとかいう……。
その神様と、平凡な病弱美少女のわたしに何の関係が?
わたしがキョトンとしていると、女の子は夢殿の模型を天高くかかげ、こうさけんだ。
「夢殿よ、われを夢の国へといざなえ!」
「え? え? なになに!?」
夢殿(の模型)からまばゆい光の線がいく筋も放たれ、わたしは思わず目をつぶった。
そして、次に目を開いたときには、わたしはたくさんの花々が咲き乱れる不思議な場所にいたのだ。
ほえ? わたし、さっきまで公園にいたよね!?
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