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異世界は、もう本当に星の数ほどありましてね……。いまだにわたしが把握しきれていない世界がたくさんあります。
そして、人間たちの魂が寝ている時間に迷いこむ、この夢の世界です。
わたしは、亡くなった人たちが快適にすごせるようにあの世を管理したり、たちの悪い妖怪や悪霊たちが人間のいる「現し世」にやって来ないように防いだり、大忙しなのです。
とても、夢の世界まで管理している余裕はありません。なのに、夢の世界にも、人間たちに悪夢を見せて苦しめようとする鬼たちがいまして……。
しかも、その鬼たちがどいつもこいつもたちの悪いやつらばかりで、わたしはストレスで死にそうになりましたよ。
そんなふうに困っていたあるとき――といっても、もう何百年も昔のことですが――バクくんが夢の世界にあらわれたのです。
悪夢が大好物なバクくんは、鬼たちが生み出した悪夢を次から次へと食べてくれました。
わたしは、
「ヤッター! もう夢の世界はバクくんにまかせちゃお! この子が何者か知らないし、何が目的で夢の世界にあらわれたのかも知らないけれど、特に大きな問題じゃないよね!」
と思い、実際、この数百年ほどはバクくんを夢の世界で野ばなしにしていたのです。
あなたが、バクくんから力を吸い取ってしまった昨日までは。
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