4 ひとりぼっちのユメミ

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 それから20分後。 「はぁ……はぁ……。や、やっと着いたぁ~……」  わたしは、やっとのことで中学校にたどりついた。  予鈴(よれい)が鳴るぎりぎりの時間だから、もう生徒たちは校舎内にいるのだろう。校門前には、わたしと、わたしの頭をむしゃむしゃ食べているバクくん、それから、あくびをしている野良ネコしかいない。 「も、もうダメ……。完全にグロッキー状態……」  ふつうの人なら、公園から学校まで半分の10分で行ける。  でも、わたしはノロマだし、体力ないから途中で何度も休憩(きゅうけい)しちゃうし、空に浮かんでいる雲がケーキみたいな形をしていたら、ケーキをたらふく食べる妄想をして、ヨダレをたらしながら立ち止まっちゃうし……。  う~ん、明日からはもうちょっと早く家を出たほうがいいかも。  わたしはそう反省しながら、校門をくぐるのだった。  わたしの教室は、1年C組。転校生でも何でもないから、ふつ~に教室に行き、ふつ~に自分の席にすわる。  ありがたいことに、生徒たちの机にはそれぞれの名前が書かれたシールがはられていた。おかげで、教室でわいわいとさわいでいるクラスメイトたちに「わたしの席はどこでしょうか?」とおそるおそる話しかけなくてもすんだ。  え? 学校で友達をたくさんつくりたいんじゃなかったのかって?  た、たしかにつくりたいけれどさ……。  でも、いままでずーっとひとりぼっちで、小説やマンガだけが友達だった、そんなコミュニケーション能力ゼロのわたしには、自分から話しかけるのはすごくハードルが高いんだよぉ~。  はぁ~、ドキドキ。  クラスメイトのみんなは、入学から1か月以上も学校に来なかったわたしのことをどう思っているのかな?  学校をサボっていた不良だとかかんちがいされていたら、嫌だなぁ……。
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